健康・医療
2022-11-02
<発表のポイント>
・ニューロメジンUは摂食抑制ホルモンとして知られています。
・世界で初めてゲノム編集によるニューロメジンU欠損ラットの作出に成功しました。
・ニューロメジンU欠損マウスとは異なり,ニューロメジンU欠損ラットは摂食量が増加せず、肥満にもなりませんでした。
・本研究成果は、近縁種でもホルモンの働きが異なることを示しており、生物は想像以上に多様であることを示唆しています。
◆概 要
哺乳類のモデル動物であるマウスの研究から、ニューロメジンUは摂食を抑制するホルモンであることがわかり、抗肥満薬の候補として期待されていました。しかし今回、別の哺乳類モデル動物であるラットを用いて、ニューロメジンU欠損動物を作出したところ、ニューロメジンU欠損ラットは摂食量や肥満において正常なラットと変わらないことがわかりました。さらにその原因として、マウスとは異なり、ラットでは摂食制御に関与する脳領域にニューロメジンUやその受容体がほとんど発現していないことがわかりました。
これらの研究成果は、2022年10月27日、国際学術誌「Scientific Reports」のオンライン版に掲載されました。
本研究結果は、非常に近縁な種であっても、同じホルモンが同じ働きをもたない場合があることを示しています。このことは、モデル生物の実験結果をヒトに適用する際には慎重な検討が必要であり、生物は私たちが考えているよりも何倍も多様である可能性を示しています。
〇補足・用語説明
・ラット:野生のドブネズミを改良して作られた実験動物の一種。ネズミ科クマネズミ属ドブネズミ種(Rattus norvegicus)。マウスとともに医学や生物学で用いられる哺乳類モデル生物。
・マウス:野生のハツカネズミを改良して作られた実験動物の一種。ネズミ科ハツカネズミ属ハツカネズミ種(Mus musculus)。ラットとともに医学や生物学で用いられる哺乳類モデル生物。
◆相澤清香准教授からのひとこと
今回のラットの実験では、これまでのマウスの実験とは異なる結果となり、はじめは理解に苦しみました。私は実験でマウスとラットを用いますが、同じネズミと思ってその違いを気にもしてきませんでした。よく考えてみれば、体の大きさも10倍違うのだから、いろいろなことが違って当たり前なのかもしれません。「みんなちがって、みんないい。」なんて思いながら実験を続け、予想外の思わぬ展開となった今回の研究を論文として報告できて嬉しいです!
◆論文情報
論文名: Neuromedin U-deficient Rats do not Lose Body Weight or Food Intake
邦題名:「ラットにおけるニューロメジンUの欠損は体重も摂食量も減少させない」
掲載誌: Scientific Reports
著 者: Kyoka Yokogi, Yuki Goto, Mai Otsuka, Fumiya Ojima, Tomoe Kobayashi, Yukina Tsuchiba, Yu Takeuchi, Masumi Namba, Mayumi Kohno, Minami Tetsuka, Sakae Takeuchi, Makoto Matsuyama, Sayaka Aizawa
D O I:10.1038/s41598-022-21764-6
U R L:https://www.nature.com/articles/s41598-022-21764-6
◆研究資金
本研究は、独立行政法人日本学術振興会(JSPS)「科学研究費助成事業」(若手研究・JP20K15833,研究代表:相澤清香)と公益財団法人三島海雲記念財団「学術研究奨励金」(個人研究奨励金)と公益財団法人小柳財団「研究助成」と山陽放送学術文化財団「研究助成」を受けて実施しました。
◆詳しい研究内容について
マウスは太るがラットは太らない?!~摂食抑制ホルモンが生物種によって異なる働き~
https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r4/press20221028-6.pdf
◆参 考
・岡山大学大学院 自然科学研究科
https://www.gnst.okayama-u.ac.jp/
・岡山大学理学部
https://www.science.okayama-u.ac.jp/
・岡山大学大学院自然科学研究科(理学部生物学科)分子内分泌学研究室
https://sites.google.com/view/molecular-endocrinology-lab/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0?authuser=0
・重井医学研究所
https://www.shigei.or.jp/smri/
◆本件お問い合わせ先
岡山大学 学術研究院 自然科学学域(理)准教授 相澤清香
〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中3-1-1 岡山大学津島キャンパス 理学部本館 1階
TEL:086-251-7871
https://sites.google.com/view/molecular-endocrinology-lab/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0?authuser=0
<岡山大学の産学官連携などに関するお問い合わせ先>
岡山大学研究推進機構 産学官連携本部
〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
TEL:086-251-8463
E-mail:sangaku◎okayama-u.ac.jp
※◎を@に置き換えて下さい
https://www.orsd.okayama-u.ac.jp/
岡山大学メディア「OTD」(アプリ):https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000072793.html
岡山大学メディア「OTD」(ウェブ):https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000215.000072793.html
岡山大学SDGsホームページ:https://sdgs.okayama-u.ac.jp/
岡山大学SDGs~地域社会の持続可能性を考える(YouTube):https://youtu.be/Qdqjy4mw4ik
岡山大学Image Movie (YouTube):https://youtu.be/pKMHm4XJLtw
「岡大TV」(YouTube):https://www.youtube.com/channel/UCi4hPHf_jZ1FXqJfsacUqaw
産学共創活動「岡山大学オープンイノベーションチャレンジ」2022年11月期共創活動パートナー募集中:
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000991.000072793.html
岡山大学『THEインパクトランキング2021』総合ランキング 世界トップ200位以内、国内同列1位!!
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国立大学法人岡山大学は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を支援しています。また、政府の第1回「ジャパンSDGsアワード」特別賞を受賞しています
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